正直言うと、銀の匙が世にでるまで農業高校について思いを馳せたことなんて一秒もありませんでした。

 

それが今や、新刊の発売日には必ずチェックしているのはもちろん、他にも農業系の本だったり、食に関するものを勉強したりと影響受けまくりの

 

派生効果ありまくりなのです。
なぜ、こんなにも面白いのか。最新刊の12巻を読んで考えてみます。

 

 

銀の匙 Silver Spoon(12)


 

 

現実をストレートに表現する潔さ


 

 
農業なんて不自然な密度で人間に都合のいい動植物を投入する事業だもん。自然破壊だろ。

 

 

農業高校マンガなのに、農業を批判しているようなこの言葉。ほぼほぼ主人公以外は、小さい頃から農業一筋の連中ばかりで、農業に対してすごいドライというか、穿った見方をしていないんですよね。反対に、農業の未来についてはすごい前向きな思考をしていて、そのギャップもまたいい。

 

 

こうした一見ネガティブな表現は、メインテーマに対してはマイナスの効果を及ぼすんでしょうけど、「農業」を描くにあたって、農家が考えていることをリアルな言葉で知れるっていうのは、すごい魅力。

 

 

だって僕らが普段食について何かしらの思いをもつ機会っていうのは、毎食の「いただきます」くらいなわけで、そんな人が「農業ってなんだろう?」って本から考えようってなったときに、単なるメリットだけの提示をされても意味ないんですよ。なんとなく農業って大変そうだな、とか、楽そうだな、とかその程度のことしか思えないわけです。

 

 

そこに例えば、先の引用文のような「農業なんて自然破壊だ」とか「と殺することになるんだから名前はつけるな」とか、けっこうショッキングなんですけど、率直なことを知れるとちょっと思考が変わりますよね。

 

 

え?!って思うような事実っていうのは、僕らの脳みそに電気ショックを与えてくれるんです。

 

 

凝り固まった頭を動かしてくれる。

 

 

だから、どんなに酷なことでもしっかりと伝えてくれる、その部分に大きな魅力があると思うんです。

 

 

今もてる全てを使って突き進む、若者たちの姿


 

 

現実的な言葉を投げかける一方で、高校生たちの目は未来の農業を常に見ています。

 

なにかキーワードが出てきたら、そのリソースを使って一体どんなことができるのか、即座にディスカッショんがはじまる。

 

その前向きさに僕は毎度心うたれます。

 

現状の厳しさをしっかりと認識した上で、もっといい未来をつくっていうくにはどうしたらいいか。

 

地に足の着けて、夢を叶えようとしているんですね。

 

 

四季の巻に入ってからは、八軒勇吾が実現したいことに向け、起業をしかけます。

 

なんとなくの起業じゃなくて、周りを巻き込みながらの起業。

 

高校生活で八軒勇吾が得てきたすべてのもの。

雄大な自然や命の扱い方、実学や体力、身につけた価値観、そして仲間たち。

 

 

みんなの力をかりて進んでいく。ついつい応援したくなってしまう起業なんです。

 

 

そうやって、不器用ながらも少しずつ行動を重ねていくそんな姿は、限りなく等身大でマンガっぽくない。たぶん八軒たちを見ていて、自分も何かやってみようと思う人たちが出ているんじゃないでしょうか。

 

人にエネルギーを与えてくれる。間違いなく大きな魅力のひとつですね。

 

 

 

最後に、仲間から見た八軒の姿と、成長した八軒の言葉を。

 


他人のために労を厭わないやつに人は付いていくものだ。

 
人の夢を否定しない人間に、俺はなりたい。

 

 

 

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