爆走兄弟レッツ&ゴー!!(1) (てんとう虫コミックス)[Kindle版]

爆走兄弟レッツ&ゴー!!(1) (てんとう虫コミックス)[Kindle版]





  • 作者:こしたてつひろ

  • 出版社:小学館

  • 発売日: 2015-05-15






 

 

 
コンマ数秒の速さを求め熱く燃えていた

あのころの少年に贈る!!

 

デカデカと書かれた表紙の誘い文句に見入ってしまった。セブン-イレブンの単行本スペースでの出来事である。コンビニコミックというのは、通常の単行本およそ2冊分に相当するボリュームの廉価版コミックである。ペーパーバックともいう。安いが分厚く、ちょっと読みづらい。でも、取り上げられるような作品はなかなか中古品でも全巻を取り揃えるのが難しかったり、レンタル屋さんにも置いていないような絶妙な作品群だったりする。『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』も今やそのうちの一つに属するだろう。そもそも私のような20代でも、アニメで知った人のほうが多く、原作が存在するということを知らないかもしれないが・・・。

 

『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』は1994年にコロコロコミックで連載が開始された。元々ブームが来ていたミニ四駆をさらに子どもたちに購入させる戦略として、「競争」がテーマの作品を、ということで著者である こしたてつひろ氏に呼び声がかかった。昔から、マンガやアニメとおもちゃの結びつきは深い。ホビー会社がアニメのスポンサーとなり、マンガ・アニメが見られればその分だけ広告にもなり、おもちゃを売ることができるという関係性にあった。少年時代、そんなこととはつゆ知らず、ミニ四駆にのめり込んでいたわけだが、今こうして読んでみるとその商業的な匂いを感じずにはいられない。

 

肝心の原作はというと、キャラクターとミニ四駆のデザインで勝負しているマンガ、といっていいだろう。絵や表情こそ単調で、人物の顔のパターンは喜怒哀楽+αの10種類程度しかなく、どれも同じ表情に見えてくる。しかし、星馬兄弟、鷹羽兄弟、藤吉郎といった主人公チームに加えて、敵キャラのカイ、ゲン、レイといった個性的人物たちは20年の時を経た今言われてみても、顔をすぐに思い出せるくらい印象に残っている。加えて、ミニ四駆のデザインなんかもよく記憶している。マグナム、ソニック、トライダガーはもちろん、レイスティンガー、ブロッケンGなどの悪役機ですら思い出せるのだ。極端なまでの個性の付け方が幸いして、覚えやすい構造になっているのかもしれない。青髪の星馬豪を例に取ると、彼は直線重視のスピード野郎で「かっとべ!マグナム!」がもっぱらの口癖の単細胞バカだ。一方、兄貴の星馬烈は沈着冷静でコーナリング重視、理論重視の頭脳派である。この真逆な性格の二人が時には手をたずさえ、強敵難敵から勝利をもぎとっていく。こうして書くと、王道中の王道を突き進む作品であることがわかる。だからこそ、少年時代の僕らには受け入れられたのだろう。

昔読んだことのある作品を読み返してみたり、勝手知ったる作品の原作を読んでみたりするということは、思いの外発見が多い。お盆休みの読書にいかがだろうか。ふとコンビニに立ち寄ったときに書籍のコーナを覗いてみれば、意外な出会いが待っている…かも。