A group of lively eggs
A group of lively eggs / zhouxuan12345678



健康のためにスーパー糖質制限をするようになってから、半年が経過しました。スーパー糖質制限とは1食に摂取する糖質量を〜20gに制限するというもので、ーご飯1杯の糖質はおよそ80gくらいー、糖質制限のなかでは縛りが厳しいものです。基本的に、お米・パン・麺類は食べない生活です。甘いジュース類も飲まなければ、ビールも飲みません。それでも飲めるお酒や炭酸飲料はあるのですが。


で、こういうと「絶対にできない!」「続けられない!」と思われる方の方が多いと思います。知人に糖質制限の有効性について話していても、俺には無理との答えがよく帰ってきます。と同時に、なぜ糖質制限を続けられるのか、という疑問も当然ながらぶつけられます。その質問に対して、僕がいつも答えるのは「意志の強さ」です。当たり障りのない回答ですが。
ただ、この意志の強さが一体どこからくるのかというと、僕個人の経験によるところが大きいです。その経験というのは、死ぬ思いをした、ということに尽きます。糖質がすべての原因であるとは言い切れませんが、原因の大部分を占めているとは思います。

ここから先は、かなりパーソナルな体験によるものなので飛ばしてもらっても構いません。


それが起こったのは14歳のときでした。中学2年生の3月だったと思います。深夜3時ころ、突然の腹痛で目が覚めました。いつもの腹痛だろうと、再び布団にもぐったのですが、どうにも痛みが引く気配がありません。小学校高学年の頃から、急にトイレに行きたくなるような突発性の腹痛に悩まされてはいたのですが、ー今考えればこの時点で何らかの初期症状だったのだと思いますー、大したものではないだろうと高をくくっていたのです。

痛みを抱えたまま2時間ほど経過した頃でしょうか、急激に痛みが増していくようになりました。秒針が進むにつれて際限なく、みぞおちの辺りにこらえきれないほどの激痛が走ります。こらえきれずに、睡眠中の両親を起こし、近くの救急センターへと連れて行ってもらいました。病院へ到着するころには、痛みによって身体に力が入っていたせいか、肩まわりが妙に痛くなったのを不思議に思ったものです。
当直の先生にエコー検査をしてもらった結果、どうやら胃のあたりに異変があるようでした。当の僕は痛みに耐えるのが精一杯で、どんな説明をされていたのか詳細は覚えていません。痛み止めを打ってくれるらしいことは辛うじて理解し、気分が楽になったのか気づいたときには眠ることができていました。眠るまでの間に、時間は7時を回っており、救急センターの外では外来の患者さんたちが受付をしている喧騒が耳に入ります。ひんやりとした病院内をエコー検査したままの身体に毛布を巻きつけた状態で、僕はストレッチャーに載せられ運ばれます。


次に目を覚ましたのは午前だったか、午後だったか定かではありませんが、正午近くだったように思います。そこからはあっという間の出来事で、腹部の手術をすることを告げられ、あれよあれよというまに麻酔がかかり、再び長めの眠りにつくことになります。手術室に入るときの記憶は鮮明で、家族が手術室の手前まで見送り「がんばれ!」と口にしているのが聞こえ、術衣をめかしこんだ医者たちが顔を覗いていました。ドラマで見たまんまの光景じゃないかと、ついつい思ったものです。


痛みに苦しんだのはここまでで終わりです。あとはいわゆるリハビリ期間とも療養期間とも言われるもので、思ったほどの辛さはありません。というより、発症時の強烈な痛みのほうが強すぎた、と言ってもいいかもしれません。


病名は、十二指腸潰瘍穿孔というものでした。胃の出口にある十二指腸という部分にクレータのような凹みが生じ、穴が開いてしまったというものです。胃酸過多によって、十二指腸に炎症が起きたということですね。病気については、また長くなってしまうのでまた別の機会に譲ることとします。




僕が14歳のときに、生命の危険を感じるという経験があったのでした。その原因は胃酸。その後の経過はどうだったのかというと、14歳で穿孔、21歳で潰瘍再発、そして今春で再び腹痛に悩まされる・・・といった具合で、とてもいいとはいえないものでした。



さて、糖質制限の話に戻ります。糖質制限では、消化に時間のかかる糖質をカットします。そのことによって、胃酸の分泌を必要最低限に抑えることができるようになるのです。初めて糖質制限を知ったときには、単なるダイエット法だという認識でしたが、理解を深めていくにつれて、これは僕の病気の根本的な解決法となるんじゃないかと思うようになりました。
そのバックグラウンドの上で、エイヤ!でスーパー糖質制限をはじめたのが今年の春、およそ半年前のことになります。その後、腹痛はどうなったのかというと、ーおそらく潰瘍だと思いますがー、完全に鳴りを潜めました。次に胃カメラ検査をするまで、正確な判断は禁物ではありますが、胃・十二指腸は快方に向かっているんじゃないかと思います。


スーパー糖質制限を続けるにいたる僕の意志の源泉は、死ぬ思いをしたという経験に尽きると思います。そのタイミングがたまたま早かったから、今こうして平気に糖質制限を続けられていると言っていいでしょう。これは万人に適用できるものではないですし、この話を知ったからといって想像を膨らませ、意志を強固にすることは難しいでしょう。ただし、経験していないからできない、ではあまりに間口が狭い結論だとも思います。もし、多くの人に適用できるモチベーションを考えるとするなら、将来の健康を想像してみるしかないでしょう。今の日本で平均寿命まで生きたとすれば、死因はガン、心筋梗塞、脳梗塞の3つに集約されます。老衰でなくなるのは10人に1人もいません。このどれかで生命を落とすというふうに考えると、糖質制限はこのいずれにも多かれ少なかれ対抗できる健康法であると僕は考えています。これが第2のモチベーションであるともいえます。なので、もし僕個人の経験を除外した上で、糖質制限のモチベーションはなんですか?と問われれば、将来の健康のため、という至極シンプルなところに落ち着くんだろうと思います。



 
炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)

炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)

  • 作者:夏井 睦
  • 出版社:光文社
  • 発売日: 2013-10-17