the_sky_crawlers_2
the_sky_crawlers_2 / perry_marco




読書の原体験は?と聞かれれば、必ず言うのが『スカイ・クロラ』だ。ミステリ作家、森博嗣の作品でシリーズものである。忘れもしない18才の夏、免許を取ろうと自動車教習所に通っていた私は講習の合間の時間を埋めるためになぜか本を読む気になったのだ。もともと、押井守監督の映画「スカイ・クロラ」はチェック済みだったのだが、原作があることを全く知らず、本屋で見かけた同タイトルの文字に衝撃を覚えつい買ってしまったというのがことのはじめである。結局、この本があまりに面白くて、その後6年をかけて2500冊もの本を貪る読書狂へと私は変貌し、ある意味人生が変わってしまった。今では本なしの生活は考えられないし、考えたくもない。私にとってかなり重要な1冊なのだが、それは単なる内容の面白さだけに留まらない。


本書はシンプルで余分なものを削ぎ落とした美しい物語であると同時に、装丁も素晴らしい1冊なのである。特に単行本が素晴らしい。本のカバーがまず透明である。透明であるから、素材も紙ではない。タイトルと裏表紙のバーコードだけが白塗りでそれ以外はクリアだ。本の表紙には、タイトルを象徴する空の風景がプリントされており、それが裏まで一つながりとなっている。この空の風景は表紙だけに留まらず、見返しまでびっしりと印刷されている。その徹底ぶりがまた、読書初心者だった私に突き刺さったのだ。


この本だけは、はじめに購入してからというもの常に私の本棚にありつづけている。一時は蔵書の苦しみによって泣く泣く手放した本はたくさんあれど、本書だけは手放せなかった。電子書籍の手軽さにハマり、Kindleのスマートさに首ったけとなっていたときも、『スカイ・クロラ』だけは紙の本で読んだ。読んだ本は売ることにしていた断捨離精神を持っていたときもやはり、この美しい単行本は絶対になくならなかった。結局のところ、私はこの本の“すべて”が好きなのだ。





 
スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

  • 作者:森 博嗣
  • 出版社:中央公論新社
  • 発売日: 2001-06